
DX時代の新常識 – AIで実現する効率的なデータ活用術

「データは大切だ」「データを活用しなければならない」
このフレーズを、最近よく耳にするのではないでしょうか。
しかし、実際にどのようにデータを集め、どう活用すれば良いのか。
具体的なイメージが湧かない方も多いはずです。
特に、以下のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
- 日々の業務でデータは蓄積されているが、どう活用すれば良いかわからない
- データ分析の専門知識がないため、活用に踏み切れない
- システム導入のコストや手間が気になる
実は今、AIの発達により、これらの悩みは急速に解決可能になってきています。
データ分析の専門知識がなくても、誰もが簡単にデータを活用できる時代が訪れているのです。
この記事では、教育現場、自治体、企業など、様々な分野での具体的なデータ活用事例をご紹介します。
AIを味方につけた効率的なデータ活用のヒントがきっと見つかります。
なぜ今データ収集が重要なのか
私たちの日常業務の中では、様々なデータが生まれています。
お客様との会話、業務の記録、報告書など、これらは全て貴重なデータです。
しかし、これまでこうしたデータを有効活用するには大きな壁がありました。
データを分析するには統計の専門知識が必要で、専門家の採用やコンサルタントへの依頼など、多大なコストが必要だったのです。
ところが今、状況が大きく変わろうとしています。
ChatGPTに代表される新しいAIの登場により、専門知識がなくてもデータを分析し、そこから意味のある示唆を得られるようになってきました。
さらに重要なのは、AIの進化の速さです。
今後もAIの性能は急速に向上していくことが予想されます。つまり、今収集を始めたデータの価値は、時間とともにどんどん高まっていく可能性が高いのです。
このような状況下では、データの収集と活用が、業務改善や他社との差別化における重要な鍵となります。
データに基づく意思決定ができる組織とそうでない組織では、その差が徐々に広がっていく可能性があります。

どんなデータを集めるべきか
データ活用の第一歩は、適切なデータを集めることから始まります。
ただし、「とにかく何でも集める」というアプローチは効果的ではありません。
まずは以下のような、日常業務で自然と発生する初期コストの掛からないデータを集めることからおすすめします。
日常業務で発生するデータ
- 対応記録:お客様との会話、相談内容、提示した解決方法
- 業務記録:作業時間、手順、結果
- 定型文書:報告書、議事録、申請書類
- 顧客データ:年齢、性別、住所、購入商品、アンケート結果
これらのデータは、既に何らかの形で記録されている場合が多いです。
重要なのは、これらを「デジタル化して保存する」という意識を持つことです。
デジタルツールで自動収集できるデータ
- ウェブサイト:訪問者数、よく見られているページ、滞在時間
- センサーデータ:温度、湿度、動作検知
- コミュニケーションログ:メール、チャット、電話記録
- 業務システム:在庫状況、売上データ、取引履歴
これらのデータは、適切なツールを導入することで自動的に収集することができます。
例えばWebサイトであればGoogleアナリティクスから得た情報をスプレッドシートへ自動で連携することが可能です。
AIによるデータ活用の実践事例
ここからは、教育現場・インフラ・自治体の市民サービスに関するデータとAIの活用事例をご紹介します。
事例を知って、データとAIの活用をより身近にイメージしていきましょう。
教育現場
教育分野のAI活用には、慎重な検討と適切なガイドラインが不可欠です。
ただし、AIを適切に活用できれば生徒の学習支援と教職員の業務効率化の両面で非常に大きなメリットがあります。
岐阜県では、文部科学省のガイドラインに基づいた実証事業を展開しており、ここでは特に注目すべき事例をご紹介します。
岐阜市の中学校
岐阜市は2023年、スタディポケット社と共同で中学校における生成AI活用の実証事業を開始しました。
岐阜市立長良中学校(生徒約300名)をモデル校として、生徒の学習支援と教職員の業務効率化の両面からAI活用を進めています。
生徒向けには「スタディポケット for STUDENT」というサービスを導入し、授業や家庭学習での学習支援を行っています。このAIは「答えを直接教えない」方式を採用しており、対話を通じて生徒の探究的な学びをサポートしています。
教職員向けには「スタディポケット for TEACHER」を提供し、AIによる日常的な校務のサポートを実施しています。
これにより、教員が生徒と向き合う時間を創出しようとしています。
生成AI活用に関する岐阜県教育委員会のガイドライン
岐阜県教育委員会は、2024年9月に学校現場での生成AI活用に関するガイドラインを発表しました。
このガイドラインでは、生成AIの活用を一律に禁止・義務付けるのではなく、限定的な利用から段階的に進めていく方針を示しています。
特に重要な点として、AIの利用には学校設置者(市町村)が定める情報セキュリティポリシーの遵守が必要で、私用アカウントの使用や無許可での端末持ち込みは禁止されています。また、生徒の利用に関しては、13歳以上であることや保護者の同意が必要といった年齢制限にも注意が必要とされています。
このガイドラインでは先ほど紹介した岐阜市立長良中学校の取り組みが実践例として挙げられています。
岐阜市立長良中学校と瑞穂市立穂積中学校がモデル校に指定され、教科学習での活用(理科の実験計画立案、英語での意見文作成、社会科での歴史的考察)などの実証が行われています。
その中で、生成AIを正解の提示ではなく、考えを深めるためのツールとして活用することの重要性が強調されています。
インフラ管理での活用
インフラ管理においても、AIの活用が本格化しています。
従来は人手と時間をかけて行っていた点検・予測・管理業務が、AIの導入により大幅に効率化されつつあります。
特に注目すべきは、データ分析による予防保全や、リアルタイムでの最適化など、これまでは実現が難しかった新しいサービスの展開です。
つくば市のスマートシティ化への取り組み
つくば市は、AIを活用したスマートシティ実現に向けた「つくばモデル」を推進しています。
研究学園都市として知られる同市では、交通渋滞や公共交通の利便性、高齢者の移動手段といった地域課題の解決に向け、先進的なAI技術の導入を進めています。
特に注目すべき取り組みが、AIを活用した交通管理システムです。
道路交通データの分析により渋滞発生パターンを予測し、効率的な交通制御を実現します。
また、公共交通機関の利用データを分析することで、最適な運行計画の策定も進めています。
さらに、顔認証技術を活用したバスの乗降管理や、高齢者向けのパーソナルモビリティの導入など、先進的な技術を活用した包括的な都市交通の最適化を目指しています。
人口約26万人の地方都市において、AIを活用した社会インフラの改善を進める先進的な事例といえます。
衛星データを活用した水道管の漏水対策
日本の水道インフラは深刻な老朽化問題に直面しています。
全国の水道管の約19.1%(約14万km)が法定耐久年数を超過しており、従来の点検・維持管理手法では、膨大な費用と時間を要する状況となっています。
この課題に対し、宇宙開発ベンチャーの天地人社は人工衛星のデータとAIを組み合わせた革新的な解決策として「天地人コンパス 宇宙水道局」と呼ばれるシステムを開発しました。
このシステムでは500機以上の人工衛星から取得したデータを活用し、約100 m四方の範囲で漏水リスクを5段階で評価します。
AIによる機械学習を用いた解析により、点検費用を最大65%、調査期間を最大85%削減できることが実証実験で確認されています。
弘前市上下水道部が国内8番目の導入自治体となるなど、この先進的な取り組みは、人口減少や税収減が予想される中での効率的なインフラ管理の新たなモデルとして注目を集めています。
住民サービスでの活用
行政サービスにおける問い合わせ対応は、住民満足度に直結する重要な業務です。
しかし、限られた人員で24時間365日の対応を行うことは困難でしたが、AIの活用により、この課題を効果的に解決しようと進めています。
神戸市における生成AI活用の全庁的な取り組み
神戸市は2023年6月から3か月間の試行期間を経て、2024年2月からMicrosoft社の生成AI「Copilot」の本格導入を開始しました。
全職員約12,000人が利用可能な環境を整備し、文章作成・要約、アイデア創出、プログラミング支援、外国語翻訳など、幅広い業務での活用を進めています。
ただし、個人情報などの非公開情報の取り扱いは禁止されています。
この全庁的な取り組みを成功させるため、神戸市は体系的な支援体制を構築しています。
利用ガイドラインの整備、職員向けオンライン学習コンテンツの提供、プロンプト事例集の作成など、職員が適切かつ効果的にAIを活用できる環境づくりを重視し取り組んでいます。
業務面での活用成果も着実に現れています。
市民アンケートの作成では、AIが利用者の心理を考慮した設問設計を行うことで回答率が向上しました。
政策立案においては、AIが多様な市民ペルソナを自動生成することで、新型コロナワクチン接種促進策などで、きめ細かな施策立案と効果的な情報発信を実現しています。
また、人事考課調書作成では、AIによる文章生成支援システムの導入により、経験の浅い職員でも適切な評価文書を作成できるようになり、業務の効率化と品質の標準化を達成しています。
さらに神戸市は、年間5,000件を超える市民提案をより効果的に活用するため、AIを活用した新しい広聴システムの構築も進めています。
提案内容の具体性向上と、市民間での意見共有を促進する双方向型プラットフォームとした広聴システムの確立を目指しています。
このシステムは、AIによる投稿サポート機能が備わっており、投稿時点で具体的な課題や要望を明確化し、さらに市民同士の対話を通じて提案の質を高めていく仕組みとなっています。
これら自治体組織の包括的な取り組みは、生成AIの実務活用における先進的なモデルケースとして注目されています。
業務効率化にとどまらず、市民との対話を深め、より良い市政の実現を目指す新しい行政DXの形を示しているといえます。
データ収集の前に
ここまで具体的なAI活用の事例を紹介してきました。
しかし、先ほどもお伝えしたように闇雲に様々なデータを集めても意味がありません。
初めは既に集めているデータの活用をするべきとお伝えしましたが、業務改善をするためには新たなデータが必要となってくるはずです。
データ活用を始める前に、まず現状の業務における改善可能性を明確にする必要があります。
具体的には、どの業務プロセスにAIを活用することで、どのような効果が期待できるのかを具体的に検討します。
この段階で重要なのは、漠然とした期待ではなく、データ活用後の定量的・定性的な効果測定をイメージすることです。
次に、想定した改善を実現するために必要なデータを特定します。
既存の業務で自然と収集されているデータを最大限活用しつつ、新たに収集が必要なデータを明確にします。
この際、必要なデータの量(サンプル数)と、データの正確性や網羅性といった質の観点から、どのようなデータをどの程度収集する必要があるのかを明確にすることが重要です。
例えば、アンケートデータであれば、統計的に意味のある分析が可能な回答数の目標設定や、回答の偏りを防ぐための質問設計などが必要となります。
さらに、初期投資を抑えた実証実験の可能性を検討します。
既存のシステムやリソースを活用しながら、小規模でも効果検証が可能な方法を見出すことが、本格的な展開への重要なステップとなります。
小さなスタートから小さな成功体験を積み重ねていくことがデータ活用にとって非常に大切なことです。
実行時の重要な観点
検討結果を踏まえ、実行段階では組織全体でのデータ活用の仕組みづくりが重要となります。
部門間でデータ活用の方針を統一し、必要な情報が適切に共有される環境を整備します。
この際、データの利用権限や管理方法も明確に定める必要があります。
また、効果測定の方法を事前に確立することも不可欠です。
業務効率化や住民満足度など、定量・定性両面からの評価方法を設計し、継続的な改善が可能な体制を整えます。
継続的な運用に向けて
長期的な成功のためには、データ収集と活用の持続可能性を確保することが重要です。そのためには、日常業務の中でデータが自然と蓄積される仕組みと、それを活用できる人材の育成が必要不可欠です。
同時に、データのセキュリティ対策も重要な要素となります。
収集したデータの保護方針を明確にし、適切なアクセス管理とリスク対応の手順を整備することで、安全なデータ活用が可能となります。
このように段階的に検討と準備を進めることで、効果的なデータ活用の実現が可能となります。まずは小規模な範囲で実証を重ね、成果を確認しながら展開範囲を広げていく着実なアプローチをお勧めします。
まとめ
本記事で紹介した事例からわかるように、AIの発達によってデータ活用のハードルは確実に下がっています。
しかし、効果的な活用のためには、目的の明確化から始まり、適切な準備と継続的な取り組みが欠かせません。
まずは自組織の課題を明確にし、小規模な実証実験から始めることをお勧めします。
成功体験を積み重ねながら、組織全体でのデータ活用へと発展させていくことで、持続可能な改善サイクルを確立することができるはずです。